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腰が前に出る感覚とずっと向き合っていた|30代男性が“まっすぐ”戻るまでの6週間

ども、天真堂です。


この話は日頃の治療からの学びを書いてます。

ちょ〜ロングな文章なので気長に読んでみてくださいな。

■「痛みはない。でも、落ち着かない」——最初の来院


30代の男性。知人からの紹介で、初めて来院してくれた。


最初にこう言った。


「腰が痛いってわけじゃないんです。でも、ずっと気になる。

立ってても座ってても、なんか“腰が前に出てる”ような感じがして…」


整形外科では「異常なし」、他の整体では「猫背ですね」と言われたらしい。

でも本人は納得していない様子で、


「いや、自分では猫背って感じじゃないと思うんです」


たしかに、見た目の姿勢は悪くない。むしろ「姿勢が良い人」にすら見えた。


でも、体の違和感って“数字”や“見た目”だけでは語れないものだ。

この人は、ちゃんと自分の感覚を信じてここに来てくれたんだと思う。





■ 評価|構造は整って見える。でも、機能が追いついていない



まず立位姿勢を見ると、骨盤はやや前傾し、腰椎は反りすぎていた。

ASISとPSISの高さに左右差があり、体重は常に前側に抜けていた。


お腹の力は入っておらず、呼吸も浅い。

肋骨は上がっていて、吸うたびに肩が動いてしまう。


一見、整っているように見えるけど、全体的に“がんばって支えてる”感じ。

良い姿勢というより、「頑張って保ってる姿勢」に見えた。


この時点では、こんな仮説を立てた。


「骨盤の前傾と腹圧の不全が主因で、“構造的な問題”というより“機能の問題”かもしれないな」





■ 初回施術|整える前に、“緩める”ところから始めた



構造をどうこうする前に、まずは身体に“緩む”感覚を思い出してもらいたかった。


後頭部にそっと手を添え、

深い呼吸とリズムが戻ってくるのを静かに待つような介入から始めた。


そのまま横隔膜の動きや胸郭の張りにも軽くコンタクトして、

呼吸がふわっとほどける方向へ導いた。


施術が終わって立ち上がった彼は、少し驚いた顔で言った。


「あれ?腰が前に出てる感じがしない…」

「呼吸も、なんか楽かも」


…この時点で僕も「よし、完璧!」とは思わなかったけど、

「この人の体は、ちゃんと変われるかもしれない」って手応えはあった。





■ 2回目|“骨盤性”が表に出てきたタイミング



4日後の2回目。


前回の施術で緩んだ分、今度は骨盤の左右差がハッキリ出ていた。


右の仙腸関節は詰まり、体重のかかり方も右に偏っている。

本人も、


「なんか、片足にばっかり乗ってる感じがするんですよね」


と言っていた。


このタイミングで、構造的なズレがはっきりした。

だから、鶴跨術を使って骨盤のねじれを調整。


触診ではなく、「明確な構造的ズレ」があったからこその適応だった。


施術後、彼が立ち上がった瞬間——


「あ、これは…“腰が真ん中に戻った”って感じです」


笑ってそう言ってくれたのを見て、正直、ホッとした。




■ 3回目|最後に“あと少し”を合わせる



3回目。


本人の印象も見た目の姿勢も、ずいぶん落ち着いてきていた。


でも1カ所だけ、本人がこう言った。


「ほぼ大丈夫なんですけど…右腰に“ちょっとだけ”違和感が残ってる気がします」


ここで大きく調整するのは逆効果だと思ったので、

アクチベータを使って、腰椎L4の右回旋を軽く微調整。


わずかな後方変位を、丁寧に整える。


「うん。これです。全体がカチッとハマった感じがします」


彼の言葉に、僕も思わず笑ってしまった。





■ 6週間後|整ったのは、体だけじゃなかった



その後は週1で来院を継続。

6週間経つ頃には、あれほど気にしていた“腰の前への出っ張り感”はまったくなくなっていた。


そして彼は、こんなふうに話してくれた。


「腰が整っただけじゃなくて、気持ちも整ってきた気がするんです。

呼吸も深いし、朝起きても疲れてない。なんか、戻れた感じがするんですよね」





■ まとめ|仮説とズレた現実、そこから学んだこと



最初の僕の仮説は、こうだった。


「これは“機能の不全”が主因。腹圧や呼吸を整えれば、十分変わるはず」


実際、初回でそれなりの変化は出た。


でも、体が緩んでいくことで——

“隠れていた骨盤の捻れ”が明確に表れてきた。


働きを担った頭蓋の調整が、

「骨格の緊張」を静かにほどき、真のズレを“あぶり出した”のかもしれない。


そこに鶴跨術での構造的調整と、アクチベータでの微調整が噛み合った結果、

はじめて「本当のまっすぐ」に戻れたように思う。





■ この経験から得た視点



今回改めて感じたのは、


  • 構造だけ見ていてもダメ

  • 機能だけ見ても足りない

  • 感覚だけに寄りすぎても判断が鈍る



その“3つの層”を同時に観察しながら、

仮説と身体の変化を照らし合わせていくしかないんだということ。


仮説は持つ。でも、固執しない。

結果が出ても、反省する。


整ったのではなく、“本人の体が整い直してくれた”

僕は、ただそのサポートができただけ。


そう思えたこの経験は、次に同じような症例と出会ったとき、

きっと僕の判断力を深くしてくれる気がする。





■ 一言まとめ



「症状がない」=「問題がない」じゃない。

“気になる”という感覚こそが、身体からの最初のSOSだったのかもしれない。


 
 
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