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気圧変化と腰痛神経症状──臨床的に見逃されがちな“圧力差”の影響


ども、天真堂です。

今回はちとガチモードってか治療記的な内容なんでその辺よろしく。


先日、「腰が痛い」と訴える患者さんが来院されました。

ただし筋肉の張り感ではなく、“神経的な痛み”。しかもこの痛みは「いつもの腰痛とは違う」と本人も自覚されていました。


詳細を伺うと:


  • 痛みのタイミングが「この時期から急に強くなった」

  • 筋緊張ではなく、ビリビリとした放散痛に近い

  • 腹圧をかけると症状が和らぐ



──という要素が揃っており、私の中では気圧変化の影響による椎間板性の神経症状という仮説が浮かびました。




■ 仮説:気圧低下による椎間板膨隆と神経圧迫



まず生理学的な前提として、椎間板は水分含量の高い軟部組織です。

体外気圧が急激に低下した場合、体内圧とのバランスが崩れ、含水量が多い椎間板組織はわずかに膨張しやすくなる。


特に後方椎間板ヘルニア傾向を持っている人では、このわずかな膨隆が神経根との距離を縮め、物理的な接触や刺激を起こしうる。


このケースでは、


  • 急激な気圧低下(台風接近時)

  • 腰部伸展・体幹圧縮時に神経症状の再現

  • 腹圧時に改善



という臨床徴候が揃っており、「気圧変化による椎間板性の神経圧迫」が症状悪化の主因であると判断しました。





■ 腹圧で改善する理由:体幹内圧の補正メカニズム



腹圧をかけた際に痛みが軽減した点からも、次のような推論が成り立ちます。


  1. 腹圧が高まることで脊柱の安定性が上がり、椎間板の微細な動揺が減少する

  2. 腹腔内圧の上昇が、椎間板内圧と外圧のバランスを取り、神経根への突出圧を軽減する

  3. 腹横筋・多裂筋が連動的に収縮し、局所の筋緊張が自然に分散される



よって、「内圧を使って神経刺激を逃がす」という身体の本来的な補正機能が発揮されたものと解釈しています。





■ 治療選択①:電気治療ではなく“超音波温熱”を選んだ理由



本ケースにおいては干渉波や低周波電気治療は使用しませんでした。


理由は明確です:


  • 電気刺激による“筋収縮誘発”は、むしろ背筋群を興奮させ、神経根の緊張を増幅させる可能性がある

  • 筋肉そのものの弛緩が必要であり、受動的・局所的な温熱刺激の方が理にかなっていた



そのため、超音波治療(温熱モード)を腰椎両サイドに15分間照射。

目的は、


  • 起立筋群(脊柱起立筋・最長筋・多裂筋)の緊張緩和

  • 局所循環改善

  • 神経根周囲の浮腫軽減



このような狙いで実施しました。


結果、患者さんは施術直後に「なんか軽い感じがする」と感覚的な変化を報告。





■ 治療選択②:酸素カプセルの“圧力差”を逆利用



さらに、酸素カプセル(1.2〜1.3気圧)を30分間使用。


この理由には次の仮説があります:


  • 外部圧力(陽圧)をかけることで、一時的に体腔内の静脈叢(特にバトソン静脈叢)が圧迫される

  • 終了後に気圧が通常に戻った瞬間、静脈が一気に拡張=血液の再流入・回収が起きる



この“圧縮 → 解放”の循環が、


  • 神経根周囲の血行動態をリセットし

  • 疼痛物質や浮腫の排出を促した可能性がある



さらに酸素カプセルの静的環境により副交感神経優位状態が促進され、神経の興奮が抑制されたことも作用していたと考えています。





■ 結果と今後の方針


  • 治療後、患者さんは「立ってても座ってても楽です」と神経症状の消失を報告

  • 今後は、腹圧の安定性を意識した体幹コントロールの再教育

  • 天候に左右されない体を作るために、呼吸×圧調整のセルフケアの指導を進める予定





■ まとめ:天候のせい、では済ませない



「気圧が下がると痛くなるんですよね」

で終わらせるのは簡単です。


でも、なぜその気圧変化がその人の身体にだけ出てしまうのか?

どこが代償しきれずに破綻しているのか?

そこに気づけるかどうかで、施術の質は大きく変わります。


今回のように、“症状そのもの”ではなく、“発生メカニズムと構造”を見立てること。

これが、再発させない根本施術につながります。


 
 
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